車錠荒らされ

去る6月14日の晩、事件は起こった。
その日はたまたま母を載せて病院から帰ってきた。15日土曜日の朝、母校は中間試験の最終日。遊びがてら仲間に会いに行った。ある後輩007は一日暇だと言う。久しぶりに家へ来いと誘う。007は興奮している、初めて俺の運転する車に乗るのだ。
さっきは左ハンドルの我車を壁に左寄せてとめて、助手席から出たのだが、車に載ろうとした俺は助手席の鍵が開かないことに気づく。鍵穴に差し込んでも鍵が左右に空回りするだけ・・・。運転席側のドアはぴったりと壁についているため開ける隙間がない。心配笑いしている007を横目に、仕方無くハッチバックからの進入を志願する。免許取って二ヶ月経っていないのに、2度目の突入だ。なんとか中からはドアを開くよぅだ、壊れてなくて助かった。冷や汗をかきながらもお家に帰る。落ち着こうとクラシックをかけるが、隣で007が歌っている所為か耳に届かない。
駐車場についてやっと事態が飲み込めた。鍵穴部分の

割れた破片が地面に転がっていた。

鍵穴周辺はマイナスドライバァのよぅな細いもので

こじ開けられた跡が残っている。ひどいやつだ!!ついさっき文春文庫-佐々淳之氏の「突入せよ!あさま山荘事件」を読み終えたばかりで、犯罪に対する危機感と嫌悪感を募らせていた私は、思わず唸った。とっさに警視庁長官などが犯罪組織から恨まれて狙われた事象を思い出す。まさか俺にまで!?
在学中は悪に対して猛威をふるったチャレンジ同好会部長の座はとっくに退いている。大学ではできるだけおしとやかに生きようとしていた矢先にこんなことに出くわすなんて。やはりチャレンジ同好会名誉顧問の座は辞退した方がよかったのか?同好会員及び元生徒会執行部の安否が気遣われる。ちくしょー俺以外の仲間に手ぇ出しやがったらただじゃおかないぞ。俺なりに深い憎悪を煮やし、あさはかな犯人への復讐を誓う。
そんなわけで、007と事件との遭遇を面白おかしく喋りながらも、心の底では動揺を隠しきれなかったのである。

つづく