ハウルの動く城
〜Hawl's anywhere door〜


しょっぱなからネタばれも何ですが、上記のサブタイトルにもあるように、この映画の主題は「動く城」ではないのです。残念。


この映画には主人公は存在しない。なぜならば、主人公の肉体と心は離れ離れになっているからだ。

もしくは、肉体と精神の年齢がかけはなれているということもできる。


とにかく、主人公なんてハウルでもソフィーでもカルシファー(※この名前はすぐに忘れる)でも誰でもいい。まぁ俺は荒地の魔女(※以下、細木数子)が主役やと思ってるけどね。


この映画には筋の通ってへんところが多い。疑問はたくさんある。
でも素晴らしい映画やったと言えるのはなぜか。それが最後に分かればと思う。


なぜ空を飛ぶのに足を動かす必要があるのか

これは絶対おかしい。が、後々になって足を動かす癖が役にたってるのは認める。
変な虫から走ってドアに逃げ込む時とか、闇の世界を泣きながら歩く時とか。
あれはまさしく空中散歩。スカートやのに恥ずかしがらへんところも良。


◆ソフィーの年齢が90歳になったのは母のせい?

魔法をかけた魔女が90歳にしたわけやない。誰も彼女を見ただけでは何歳かなんて分からんはず。そやのに90歳なのは何故か。それは、彼女の母らしき人が、おばあさんにされたソフィーの声を聞いて「90歳のおばあさんみたいな声ね」と言った。ただそれだけで90歳になった。そいつは顔も見ずに部屋の外から話しかけただけやのにね!


◆ソフィーはなぜ細木数子(以下、魔女)に優しいのか

おばあさんになったソフィーを見たか!?その状況をすんなり受け入れ、むしろ年寄りを楽しもうとさえしている、あの前向きさ!
そして、本来ならば憎むべき魔女を城で介護することにしたのもソフィー。
サリマンの手下である犬を手なづけてスパイをやめさせたのもソフィー。
人の家に勝手に上がりこみ、勝手に家政婦になろうという強引な奴もソフィー。

とにかく、お年寄りになったソフィーは「人類皆兄弟」を提唱していたと言える!
お年寄りやからというわけやないが、内面に人間的魅力が高まったのは確かやな。


ソフィーハウルの体から出てきたドロドロの液体の正体とは!?

もののけ姫で言うところの「たたり」、千と千尋の神隠しで言うところの、ドロドロの臭いお客さん。
ハウルの場合はタタリというよりかは鬱状態の表現が粘液やと思う。
とりあえず、生命を奪うシシ神さまの粘液が強烈すぎて、ハウル化け物説が生まれてくる。というか、やっぱり化け物やった。それでも、ソフィーはハウルのことが好きだから魔法が解けるんですね。美女と野獣みたいに
ま、ソフィーとハウルは美女と美青年という設定ですが。残念。


◆城とは何を意味していたのか

これは難しい。でも動くようにしたのは、逃げたり隠れたりできる住居という意味でもハウルの自由奔放さを強調するためやったやろう。
だがそれだけのわけが無い。単なる火の悪魔なんかにわざわざそれを動かさせる必要もないし、そもそも動かせる理由はいったいなんなんや?

でも大事なのは、動く城はハウルの心であり、動いているハウルは肉体ということ。ハウルの心はカルシファーという火がともしていて、この城はそのカルシファーによってしか動かない。城が動くということは心が動くということ。そして、城に入る、そして一緒に生活するということは、ハウルに心を許されているという何よりの証拠なのだ。

ハウルは魔女をも家族と呼んだ。自分の心臓を狙っている奴を。ソフィーに魔法をかけた奴やからか?いや、ソフィーが連れて来たからやろう。しかし、ハウルの心は飽くまでも悪魔でしかない。


◆戦う理由を見つけたハウル

ハウルは戦争を止めるために魔法を使っていた。戦争によって自分の世界が壊されることを嫌い、平和な世界が壊されることを嫌った。自分のために魔法を使っていた。

魔法を戦争に使おうと企む王宮から逃げるために、城を動かしては自分達が住んでいる場所がばれないようにしてきた。そして、戦争を止めに行ってはボロボロになって帰ってくる。そんなハウルを心配するソフィーやが、ハウルは王宮から逃げずに戦うべき時に遭遇する。そう、それがソフィーという守るべきものを見つけた瞬間やった。

「僕は守るべきものを見つけたから。君だ。」みたいな台詞。キムタクの声が、いいな、と思った瞬間でもあった!


◆自分のやりたいことを見つけたソフィー

ものがたりの序盤、妹に本当に帽子屋になりたいのかと問われるシーンがある。
亡き父が残したというだけなのかも知れない、と考えたやろうと思われる。

しかし、ソフィーはハウル達と暮らすことで掃除婦という役割を見つけ出す。
なにをやりたいかはやってみなきゃ分からない。それは年齢なんかには左右されへんし、それは誰かの役にたちたいと思うことでもある。
ということも、この映画からのメッセージの1つなんちゃうやろか。


◆寝てる時のソフィーは18歳

ハウルはソフィーが90歳ではないことを最初から知っていたような素振り。
これは謎やが、ソフィーが若返る条件っていうのは、ハウルへの感情が高まった時もしくは、ハウルのソフィーへの感情が高まった時のどっちかちゃうかと思う。
愛が気を若くするというのはほんまやと思う。それだけ、愛を失うということはつらいことでもあるよな。


◆ハウルとソフィーの髪が変色しっぱなし

詳細はよぅ分からんかったが、ハウルの髪の毛はソフィーが洗面所を掃除してしまったせいで変色。しかもそれで美しさを失ったとか言い放ち鬱になって粘液を放出。←こんなん明らかに化け物。魔法で戻せや!

ソフィーも若返ったにも関わらず、90歳になった時の髪の毛の色がそのまま残っている。金髪は黒に、黒髪は灰色になってしまった。
これに意味はない!まぁこじつけるとすれば、ハウルの変化はソフィーに対する気持ちの変化を表現。あれからちょっと仲良くなったしね。そして、ソフィーの変色は、彼女の若い頭にお年寄りとしての考え方も備わったという成長を意味する変色。顔は若いが頭は年寄りってそういうことやろ。


◆「ハウルの動く城」というのが主題ではない

動く城=ハウルの心と思って間違いではないはず。つまり直訳すれば、ハウルの心。もしくは、ハウルの心臓・・・。
でもサブタイトルにも書いたように、城のドアはどこにでも行けるような、それこそ未来デパートで売ってるような品物。これが魔法というものか。そして、いろんなところに出没するという性質こそが、ものがたり前半のハウルの生き方。
どう考えても、タイトルは「ハウルのどこでもドア」にするべきやったと思う。


◆「ふたりが暮らした」は「ふたりで暮らした」ではない

映画が終わった後に、「弟子も悪魔も魔女も住んでるやん、どこが2人やねん!」と言ってたけど、俺が浅はかでした。誰も、ふたりで暮らしたとは書いてへん。
弟子はこき使われてただけやし、魔女は介護されてただけやし、悪魔はハウルの心臓でもあったわけやから、実際に「暮らしてた」のは2人という見方もできるとは思う。


◆実は小型化もできちゃうハウルの城

悪魔という心を抜かれた城は崩れた。しかし、再び悪魔が動かした城はかなり軽量化されていた!それにしても、火の悪魔は流れ星やったのか?悪魔やのに流れ星なんか?わけわからんけど、あいつの考えてることは悪いことやなかったし、普通に良い奴やった。おだてられると調子に乗るところとか。

でも、もっかい城を動かす時に、濡れて力の弱まった悪魔はソフィーの髪の毛を食うことで力を出すことができた。目ん玉とかやったらもっと力が出るとか言う悪魔っぷりやが、ハウルの原動力がソフィーになっていることを表現するにはぴったりの方法やったとは思う。


◆かかしやった隣の国の王子は何者?

このものがたりに登場する者は、とりあえずなんらかの魔法にかけられていると言っていい。それは良いとして、逆白雪姫みたいにソフィーの口づけで魔法が解けたかかしは何者なのか。
ちょっと山でひっくり返ってるのを助けてもらったぐらいで、恩義を感じすぎ。
最初からソフィーに恋をしてたんちゃうか?つまり彼は90歳のソフィーが実は若いということを知っていた!
おわかりですね?かかしは魔女やったんですよ。考えてみれば、あのぶくぶく太って若い美少年好きなおばさんと、棒切れ一本のかかし、外見がものすごく対照的。きっと魔女がかかしに化けていたに違いない。極悪!

と思ってたら、最後は魔女も城に住んでるし、かかしもいるし。つまり別人。
でも、かかしは90歳のソフィーと出会ったのに、最後に若返ってる姿を見てもなんも驚いてへんかった。やっぱり、親切にされたら好意を抱くってことやね。例え相手が90歳でも!
まぁ、王子が90のおばさんと結婚する言うたら、国民は大爆笑やろうけどね。


◆ハウルの正体

ハウルの心臓が火の悪魔というぐらいやから、やはりハウルは悪魔なんやろう。
でも、作中でなんども変身する鳥形態は仮の姿。子どもの頃のハウルは現在のハウルに似てた。そやから、きっとハウルの姿は偽物やなかったんやと思う。


◆ソフィーにかけられた呪い

魔女のハウルへの執着心が呪いとなってソフィーを90歳にした。
俺が思うに、魔女はハウルへの愛情を呪いとして誰かにかけることで自分の年齢を若く保ってたんちゃうやろか。そやから、ほんまはめちゃくちゃご老体やのに小奇麗な魔女を演じれてたんやと思う。
そやから、ソフィーからハウルへの愛が魔女のそれを超えようとする度に、ソフィーは若返ってたんかも知れん。


◆戦争は簡単に終わる

「国へ帰ったら戦争を終わらせましょう」やったかな?
かかしから姿が戻った王子の台詞。ちょっと待てや!と。そんな簡単に終わっちゃうの?最初からやめとけよな、ってか誰に魔法かけられてん!
王子にとって、ハウルは敵国の配下にいる魔法使いのはず。まぁ共に城で暮らすということはそういうことか。しかし、戦争とは一部の人間によって引き起こされ、一部の人間だけが生き残るという理不尽なもの。


◆そして城は飛び立ってゆく・・・

ラストは天空の城と大差ない。映像的にはね。
でも待てよ。飛んでいいんか?まぁ「ハウルの歩く城」やないから飛ぶのは勝手やけど。誰が住んでるねん。っていうか、悪魔が去り、戦争が終わり、逃げる必要のないハウルには城なんか必要ないやん。城の存在意義ってそういうことやったやん?そもそも悪魔なしでは動かん城のはずやが。

まぁようするに愛のパワーがあればなんでもありやねんな?
そういうことだそうです。そやし、結局はふたりで暮らしてるんやと思う。


◆おわりに

この文を作りながら、ZARDのCD3枚を聴ききって2周目。
やっぱりZARDは良い、ZARD良い!「DANDAN心魅かれてく」とか「揺れる思い」なんかがこれには合ってるんちゃうかなぁ。

5時間近くに渡って分析したけど、っておい、映画より長いやん!まぁこうなることは分かってたが。

やっぱりハウルの動く城は良かった。是非、お年寄りに観てもらいたい。
そして、お年寄りに特有かもしれない平和の心を私達若者に振りまいて欲しい。

最後に1つ気になってるのは、俺にも魔法がかかってるんちゃうかっていうね。
ま、そのうち呪いを解いてくれる人が来るのを気長に待つことにしよ。



解析の結果、やはり主人公は魔女ということになりました。

04年11月21日