ロボットは人間のベストパートナー

～アトムへの可能性～

3年9組26番　氏名　○○　○○　

2002年1月28日

要　約
序　章　アトムを目指す技術者達
第一章　現在の到達点
第二章　ロボットの起源
第三章　ロボットの問題点
第四章　ロボットのあり方とは
結　論　これからのロボット開発のキーワードはパートナーシップだ
参考文献

要約

　現代のロボット開発技術は、まだまだ未熟である。さらに、ロボット開発には人工知能や運動機能、コミュニケーション機能などに多くの問題が付きまとっている。しかし、これからのロボット開発において、ロボットを人間の「パートナー」として考えていくことができたなら、これらの問題の多くは解消されるに違いない。「パートナー」として、そしてロボットを新たな種族として認識し、人間とロボットが互いに成長し合っていくことを望むなら、人類は今までにない大きな発展をとげるだろう。

序章　アトムを目指す技術者達

　どの時代でも子供にとってのヒーローは「ロボット」ではないだろうか。その代表格とも言えるのが「アトム」であろう。私はテレビに映る「アトム」を見てとても感銘を受けた。それと同時に、私は「アトム」を知ったことによってロボットの技術的面から、精神的面までを深く知りたい、と思うようなった。なぜなら、彼は自分で考え行動し、人間にとってかけがえのない、誰かも愛されるパートナーであったからだ。これは本当にすばらしいことではないだろうか。「アトム」を見て育った現在のロボット技術者は、この「アトム製作」に力を注いでいるという。現代の科学技術はすさまじい発展をとげ今や自立歩行方ロボットを開発できるまでになった。しかし、その技術を持ってしても「アトム」を完全なものにするのはかなり難しいと言われている。ロボットには利点も多くあるが、問題点も星の数ほどある。ではまず最初に、現代のロボット開発での最高峰、本田技研工業から発表された「アシモ」を例にとって現在のロボットの到達点について説明していきたい。

第一章　現在の到達点

　２０００年１１月本田技研工業から、世界に類を見ない自立型二足歩行技術が実現したヒュ―マノイド・ロボット「アシモ」が発表された。さらに２００１年１１月には「アシモ」がさらに改良され、自力で階段の上り下りができる機種が発表された。本田は、二足歩行ロボットの開発を１９８６年にスタートした。試作機１号から７号「Ｅ０～Ｅ６」は足の部分しかなく、胴体部分は足を制御するコンピューターと重心を保つための重りがあり、一番重い試作機で１５０キログラムもの重さがあった。「Ｅ０～Ｅ３」では、二足歩行の実現を目指し、徹底的に人間の関節の動きを研究し、歩行速度を時速１．２キロメートルにまで上げることに成功した。ちなみに人間の歩行速度は時速４～５㎞である。そして次の目標である安定した歩行を実現するために、二つの画期的な制御機能が開発された。床のでこぼこを吸収する「床反力制御」や、上体を倒れそうな向きに加速させて姿勢を保つ「目標ＺＭＰ制御」である。試作機「Ｅ４～Ｅ６」はこの機能を付け加えてさらに完全な二速歩行を目指した。「目標ＺＭＰ制御」機能は、車が加速するとフロントが浮き上がるという原理から見つけられたものである。自動車会社らしい視点から発想した制御機能で、長年の試行錯誤の結晶であった。しかしこの結果、重量は重くなっていったが、このシリーズで二足歩行の基本機能が完成した。
　そして、この次のシリーズ「Ｐ１～Ｐ３」では胴体部を人間型にした試作機の製作に取りかかった。Ｐシリーズで有名なのが「アシモ」の一世代前の「Ｐ３」であろう。「Ｐ３」はほぼ人間の形が完成されていたが、重量が１３０キログラムというところが短所だった。しかしその三年後、「アシモ」はその短所を見事克服した。各部分を制御するコンピューターを一箇所にまとめ、なんと重量を４３キログラムにまでにしたのだ。人間の生活の中にも十分入れる形に進化したことが、世界に衝撃を与え一躍注目の的となった。また、「アシモ」には「ｉ―ＷＡＬＫ」と呼ばれるとっさの動きにも対応できる安定機能や「予測運動制御」という機能を加え、滑らかな人間らしい動きを手に入れた。本田の当初の目標である、一家に１台生活環境で使えるロボットをというものが、とりあえずは完成したのである。
　ちなみに「予測運動制御」とは次の重心をどこに持っていけばいいかという事を判断する機能で、例えば角度のきついコーナーで重心を内側に移動させ、旋回したときの重心がどれだけ外にずれるかということ計算し、歩行パターンを変えるというものである。さらに、この「予測運動制御」機能は人間との意思の疎通を行う上で大きな影響を与えると開発者は語っている。人間は何事にも先を予測しながら行動している。例えば、２人の人間が荷物をいっしょに運ぼうとする時、お互いが重心を後ろにしなければならないという予測をたてる。そして、一気に持ち上げるということを人間は無意識にしている。これをロボットと行う時お互いがその行動を見てタイミングを合わせれば言葉無しでも共同作業が出来るということなのである。

第二章　ロボットの起源

　ところで、そもそもロボットとはいつごろ考えられたものなのだろうか。ロボットという言葉が初めて登場したのは、１９２１年チェコの作家カレル・チャベックが「Ｒ・Ｕ・Ｒ」（人造人間）という著書で用いたものが最初であるといわれている。チェコ語で強制労働を意味する「ロボータ」と、スロバキア語で労働者を意味する「ロボトニーク」という言葉から造りだされた「ロボット」は、人間の苦役を代行するものとして誕生した。これは今のオートメーションなどに利用されているロボットの起源と言っていいだろう。しかし、この考え方はあの「アトム」とは程遠いロボットの考え方でである。ロボットが自分自信を守りかつ、人間の良きパートナーであるという事がかけらもない。
　それには、１７世紀の哲学者デカルトの「方法序説」というものの考え方が影響していると考えられる。デカルトは、人間や動物の生命現象が、物理的かつ機械的な法則の下に説明できると論じながら、自動機械と人間の異なる本質に迫っている。たとえ人間にそっくりな形をしていたとしても、それは人間にはなり得ないと指摘しているのだ。その根拠のひとつは言葉を使って意思を伝えられるかどうかで、ある種の言葉を発することができても、場面に応じて適切に応答できる言葉を按排できる機械はありえないと論じている。２つ目に機械は絶対に自覚では動かないと指摘している。この考え方を「心身二元論」と言うのだが、簡単に言えばロボットには「心」を持つことは不可能だということを、デカルトは言いたかったのだ。また１９５０年にはアイザック・アシモフという人物が「われはロボット」という著書の中で「ロボット三原則」というものを提言し、人間とロボットが友好関係を結ぶための大原則が示されている。しかし、この原則も決してパートナーとしても考え方ではない。

１、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視してはならない。

２、ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一原則に反する命令はその限りでない。

３、ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。ただしそれは第一、第二原則に違反しない場合に限る。

　このように、ロボットは道具としてしか考えられていなかった。そして、その根底にあるデカルトの「心身二元論」は、本当に解決できない問題なのだろうか。ロボットは人間の道具としか使えないのだろうか。それではここからは、ロボットの問題点をあげ、ロボットの本当のあり方について考えていきたい。

第三章　ロボットの問題点

　まず最初に力の問題があげられるであろう。率直に言って、すべてのロボットが人間より強く、大きくなければならないということは無い。仕事に見合った力を考えるべきなのだ。もし、家庭で暴走したロボットを人間が止められなかったらどうなるだろう。力の強弱にもよるが、死傷者が出る可能性も否定できない。材質についても同じ事が言える。ロボットの表面が硬い材質でないといけないという理由はない。人間と接する機会の多いロボットなら柔らかく、かつ物がしっかり握れる素材を使わなければいけないし、危険な場所で仕事をするロボットなら自分の身を最大限に守れる材質を使う、という具合に場面場面での見極めが必要となってくるのである。また、少し話がずれるかもしれないが、この力の問題に関連して言えることがある。当然ながらロボットは人間よりも大量に物を生産することができる。オートメーションなどがその良い例だろう。力も体力も向上させようと思えばいくらでも上げられるが、もしこれによって人間の仕事が奪われてしまったらどうだろう。産業革命時に起こった「ラッダイト運動」をまた起こしかねない。つまり、ロボットはいくらでも便利にできるが、場面場面での使い分けがうまくできなければ成らないのだ。人間の能力を越えるロボットは人間にとって良いことを生んではくれない。
　次に知能の問題を見ていこう。人工知能でよくあげられる例がチェスの世界チャンプ、カプロフがディープブルーというコンピューターに敗れたということだろう。しかし、これは単にディープブルーの計算能力が優れていたというだけで、知能知能が優れていたというわけではない。例えば「端折る能力」、これは人間特有の能力でロボットには難しいと言われている。これをフレーム問題と言い、なぜ難しいのかというと、これを行うためにはいろんな経験を参考に例外をかわしていくという高度な技術が要求されるからである。これに似た例でいえば、「場の雰囲気」を理解させるという問題もあげられる。深刻な場面で笑ったりなどしては到底人間社会では生活していけないだろう。人間の脳の仕組みを完全に解明されていない現在、人工知能を開発していること自体無謀なのかも知れない。しかし、人工知能技術は多方面から開発されている。ＭＩＴ人工知能研究所のロドニー・Ａ・ブルックス氏は、「思考よりも行動のほうがＡＩにとってずっと大事なのだ。思考だけして行動しないシステムより、行動だけして思考しないシステムのほうがよっぽど知的である。」と語っている。その他「自己学習機能」という新たな知能プログラムや、Ｋｉｓｍｅｔや、Ｃｏｇなどといった人工知能ロボットの研究も行われ、この二つのロボットに関しては人間を超える知能を持つ可能性があると言われている。人工知能の研究に携わっている研究者達は口をそろえて同じ事を言う。「起こりうるすべてのことをプログラムすることが不可能なら、人間の子供のように経験を通して自分自身でプログラムを書きかえるものを作れば良い。失敗することによって次のことを考えられるのだ。また、人工知能の研究により人間の確信に触れることも重要なテーマである。」現在の人工知能は、人間の０歳時程度の知能しかないという。しかしここに「自己学習機能」を付け加えれば、まさに人間のような成長が可能になるのだ。　
　最後にコミュニケーション能力について考えていこう。人間の場合コミュニケーションの５５％が顔の表情で成り立っているといわれている。ちなみに言葉は７％ほどしか関係していなく、「目（顔）は口ほどにものを言う。」という言葉がぴったりと当てはまる。このことは、当然ロボットにも応用しなくてはいけないだろう。なぜならロボットがコミュニケーションをとるのは人間なのだから。「介護ロボット」を考えれば、当然人間的な顔のほうが介護される立場にとっては安心できるし、またロボットの調子の悪いときも人間的な顔つきのほうが人間もそれに気がつきやすい。さらに言葉に関して言えば、たった７％であったとしても人間の「あれ、それ」という指示語の意味の理解が必要不可欠になってくるのも確かである。また、当然コミュニケーション能力の大前提になるのが、今まで述べてきた問題点の解消である。コミュニケーション能力の開発は単独では不可能である。手の無いロボット、味を感じないロボットといっしょに暮らせといわれてもかなりの抵抗があるのは当然だろう。この能力はロボット開発において最後の大きな壁になってくることは間違い無い。

第四章　ロボットのあり方とは

　今まで挙げた問題点は自立型ロボットについての記述なのだが、これを見て無理に自立型にする意味は無いのではと思う人もいるだろう。確かに医療用ロボットなどなら、操縦型のほうがずっと安全で効率よく仕事ができるし、大きな資材を運んだりするようなロボットなら、これも操縦型で十分である。しかし、大きな利点が望めるからこそ自立型ロボットの開発が行われているのだ。その最も大きい理由それは、人間を知るというところにある。人間にはまだ解明されていない多くのなぞがある。それを、人間と同じように自立して生活するロボットから見つけ出し、人間を知り、さらにロボットを改良していく。このように良い循環現象を生み出す為にも自立型ロボットの開発は必要不可欠なのである。まさに、人間にとっての最良のパートナーになり得るものなのだ。

結論　これからのロボット開発のキーワードはパートナーシップだ

　「アトム」を作るには今の技術では未熟で、ロボットが抱える人間社会での問題は山積だ。しかし「２００１年宇宙の旅」は空想にしか過ぎないと言われていた時代から数十年、今やそれは現実のものとなり、更なる発展を遂げようとしている。その成功の原動力となったのは、多くの科学者が「夢」を持ち続けて開発に携わったからではないだろうか。「アトム」の開発は難しいと言うのは誰にでもできる。しかし、可能性が１％でもある以上、挑戦していかなければいけないと私は思う。私が目指す科学者像とはまさにこれだ。私達のような若い科学者が、子供のような純粋な気持ちを忘れず、失敗を恐れず挑戦し、必要と感じることをどんどん吸収していくことが出来れば、必ず「アトム」を越えるすばらしい物が出来上がるはずだ。ロボット開発において必要の無い学問は存在しない。この地球上で学べるすべての知識が、ロボットを成長させ人間を成長させていくのだ。
　道具としてのロボットを開発してきた時代から、パートナーとしてのロボットを開発している時代への流れはロボット開発事態を大きく成長させた。アメリカのある科学者はこう語っている。「現在の若い科学者は人間に取っての幸せという意味を取り違えている。」人間の仕事を楽にするだけが人間にとっての幸せではない。人間を成長させることが人間にとっての幸せではないだろうか。ロボット開発にとっての重要なキーワードは、人間とのパートナーシップなのだ。人間からロボットを知り、またロボットから人間を知るという関係が出来上がったとき、ロボット開発の限界は存在しなくなるはずだ。ロボットは道具ではない。ロボットを新たな種族として認識し、共存していくことは人類の大きな発展につながることは間違い無いだろう。

参考文献

1.ロボットはともだちだ！、小林尚登、オーム社出版局

2.ロボットにかける夢、有本卓、岩波書店

3.鉄腕アトムは実現できるか？、松原仁、河出書房新社

4.ニュートン2001年10月号、ニュートンプレス

ロボットは人間のベストパートナー

～ アトムへの可能性～

3年9組26番 氏名 ○○ ○○

2002年1月28日

目次

要約

序章 アトムを目指す技術者達

第一章 現在の到達点

第二章 ロボットの起源

第三章 ロボットの問題点

第四章 ロボットのあり方とは

結論 これからのロボット開発のキーワードはパートナーシップだ