午後6時過ぎ、「蹴りたい背中」を読みはじめ、現在8時48分これを書き始める。 2時間半の朗読で手が冷え切り、タイプする手があらぬキーを押す。 ネット上では期待はずれという批評の方が多かったですが、僕は結構好きです。というかかなり大好きです。 場合によっては、まだまだ初版が高値で売買されているヤフオクで売ってしまおうかと思っていましたが、これは残しておこうと思います。 と言いますのも、作中で背中を蹴られる役の「にな川」は教室の1番前の真ん中の席に座っています。その背中をみて主人公のハツは不思議な気持ちをもやもやさせるわけですが、僕の高校生活3年間のうち、実に2年半は彼と同じ席でした。 理由は色々ありますが、裸眼で黒板が見えることと前に人が居ないこと、それとやっぱり先生に話しかけやすいことですね。席替えの度に立候補で席を確保していました。そのうち何も言わなくてもクジに入れてもらえなくなりましたけど♪ そんな私がこの「にな川」に感情移入するこの気持ち、分かってもらえますよね!? 今までどれだけの奴が、俺の背中を蹴りたいと、そう考えてくれたのでしょうか。 肩を叩いて振り向きざまに頬を指で突かれたことはあっても、背中を蹴ってくれるほどのアツい思いをぶつけて来る奴はついに現れなかったわけです。 綿矢さんの蹴りたい背中を読んでいる間、何度後ろをチェックしたことか。 期待とは裏腹に、いつものコンクリの壁が背中を冷たく、冷たく押し返すばかり。 イヤホンから聞こえてくる「ミュージックコレクション4〜サルサ〜」(ダイソー)のリズムだけが、僕の心を暖めてくれました。 おどけて片方の耳だけで聴いてみたり♪(にな川の真似です。あらすじ参照) かくして、僕にとって「蹴りたい背中」は思い出の品となったわけです。 ついでに希望を言わせてもらえば、これが実写化されるのであれば主人公の長谷川初実役には著者である綿矢さん本人を推薦します。なんやかんや言っても、ある程度は自分の経験に基づいた作品だと思うんですね。あ、それから、蜷川智役はこの私でお願いします、勿論。あとの人どうでもいいです(蹴り散らしてやります) 最後になりましたが、あらすじを書いてみました。 自分のために書いたようなものですが、1600字も無いのでまぁ短いと思います。 さしあたって、高校時代お世話になった国語の先生にお借りしている本のお返しとしてお貸しする予定ですが、レンタル・フリーですので声かけて下さい。特にここに来てる元立宇治生読んどけよ、同い年、そして芥川賞を取る作品がどんなだか。お金は取らないから、杉千代でいいから♥(萬来軒も可) 蹴りたい背中のあらすじ 長谷川初実はクラスになじめない、というか選んで馴染まない高校1年生。 クラスには似た境遇にいるが全く人間関係に悩まない男子生徒にな川智がいる。 にな川はオリチャンというファッションモデルにゾッコンでそれどころではないのだ。 実はハツ(初実)、そのオリチャンと会ったことがある。それをにな川に話すと感激され、なぜか家に呼ばれる。にな川はハツがオリチャンと会った時の状況を地図に描かせるために呼んだのだ。 数日たって結局ハツは昔オリチャンと出会って話した場所に、にな川を案内することになる。その帰りに、にな川家へ寄る。そこでハツは膨大なオリチャングッズを目にする。その中に、オリチャンの顔と別の少女の裸写真をつなぎ合わせたものを見つける。ハツは、にな川の原点を見つけた感じに気づいたのか、つぎはぎをポケットにしまう。 その間、にな川は、囁かれているように聞こえるからという理由で片方にだけイヤホンをつけてオリチャンのラジオを聴いている。 ハツはそのにな川の背中が無性に蹴りたくなる。何故だか、にな川を痛めつけたいと言う衝動にかられるのだ。ここまで僅か60ページ。 その後もハツは部活やクラスにおいて人とうまく付き合えないでいる。中学時代からの友達である絹代は新しいグループに溶け込み、遠い存在となり始めていた。そんな矢先、にな川が4日間学校を休む。 皆は登校拒否だろうと話しているが風邪かも知れない・・・。ハツは桃を持ってお見舞いに行くことにした。 ハツは部屋で風邪で寝込んでいたにな川に前に盗んだつぎはぎ写真を返すが、にな川は恥ずかしがる様子もなく、失くしたオリチャンが帰ってきて喜んでいるようだ。 桃を食べる時、にな川の乾燥で剥けた唇に桃の汁が染みた。「痛。」と声を出したにな川を見てハツの心が少し満たされたのか、衝動的に「うそ、やった。さわりたいなめたい。」と言うと、にな川の唇を舐めた。 その行動や目つきをにな川は自分への軽蔑ととっている。 ハツにもそのことが軽蔑であるのか、それとも・・・分からない。 にな川がオリチャンの初ライブチケットを勢いで4枚買ったらしく、もったいないからハツを誘った。ハツは友達の絹代を誘った。そして、にな川に声をかける方が絹代を誘うことより気楽になっている自分に気づく。 ライブ後、にな川は人だかりのできた楽屋口に駆けつける。 ハツは、裏口をじっと睨むにな川が好きだと思う。オリチャンを見つめているにな川を好きだと思う。ドアは開き、にな川は出てくるオリチャンに近づこうと乱暴になるが、スタッフに取り押さえられる。にな川が自分の膜をやぶろうとしている姿を遠くに感じていた。 帰りが遅くなって電車がない。ハツと絹代は2人でにな川の部屋に泊まることになった。 にな川は楽屋のことでか元気が無く汗臭いままで寝ようとするが、気を使ってベランダへ出た。外は真夏である。 クーラーをガンガン効かせた部屋の中でハツと絹代は久しぶりに語り明かす。ハツにとっては絹代との時間であったが、今日のことを学校のグループに話したいなと言う絹代を見て、絹代との距離を感じる。 午前3時、絹代は寝たがハツは眠れない。ベランダが気になるが1人にしてやりたい。迷ったがベランダに出た。外は妙に蒸し暑い。クーラーが廃棄した熱風が暖めていたのだ。にな川はベランダに座りなおし、ハツも横に座った。きれいな青い空を見ながら、一緒にいても違うことを考えている、分かり合えていない自分たちを意識していた。 オリチャンに近づいていった時に、今までで1番あの人を遠く感じた、と言ってまた背を向けて横になったにな川をみて、痛めつけたい、愛しさよりももっと強い気持ちで彼の背中に足を押し付けた。ハツはベランダの窓枠が当ったと言うが、彼は彼女の足指を見てだまってまた背中を向け、ため息をついた。 以上140ページ。 |